chacha子@読書

書評への愛、あるいは未知の知覚について

映画『仮面の男』ネタバレ感想。

以下ネタバレ注意。レオ様かっこよかった……!誰に忠義を尽くしたいか。やはり、信頼や思いやりのある君主に尽くすのが騎士冥利に尽きるというものなのだろう。見初められた女性と、その婚約者が不憫だった。「他言無用」で去った騎士たち、中で何が起こった…

読書感想文 宮本輝『青が散る』

なんというか、辛い読書体験だった。メンタルが高校生なので、大学生のキラキラした感じとか、闇とかが「あ〜、あの頃のみんなはこんなのを味わっていたのねなるほど〜」という感じがした。私は文章力はそれなりにあるかもしれないが、感情の面で箱入りなの…

読書感想文 大江健三郎『大江健三郎自選短編』

岩波文庫のこの作品はとても分厚い。鈍器本一歩手前くらいだ。私は鈍器本の類いが好きなので、いいなと思う。 この作品集の中で私が衝撃を受けたのが「飼育」だった。この作品のどこにそんなに打撃を受けたのかはっきり言えないのがもどかしい。無理やり言語…

読書感想文 穂村弘『はじめての短歌』

穂村弘はアンチ社会的、である。こう書いてしまうと、何かただならぬ反社会的アナキストのように感じられてしまうが、そうではなくて、彼は「生きのびる」ことに偏ってしまうことの弊害を説いているのである。 「生きのびる」ことと「生きる」ことは、この著…

読書感想文 穂村弘『短歌のガチャポン』

作者の穂村弘は、稀代の短歌解説者だと思う。歌人という肩書の次に掲げてほしい名称だ。短歌の煌めきを一つ残らず掬い上げることにかけて、彼の右に出る人はいないだろう。 『短歌のガチャポン』には、古今東西から集められた100首の短歌が収められている。…

読書感想文『チェンソーマン バディストーリーズ』

バディの関係を中心に編まれた4篇の短編は、どれもチェンソーマン特有の低温度の淡々とした、しかし美しい物語だ。姫野先輩の願い、岸辺の一途さ、アキの優しさ。パワーの無邪気さにデンジの想い。いつ殺されるか分からない、明日の命もあるかどうかという…

ジョーゼフ・キャンベル『神話の力』読書感想文

最高の読書体験だった。神は自己の内側に存在する。有限の生と無限の生を見出すこと。ハートで生きること。至福を追求することで道を行くこと。あらゆる至言が胸に残っている。この世はなんという神秘の中にあることか!

恩田陸『日曜日は青い蜥蜴』読書感想文

恩田陸御大の贅沢な文化エッセイ。色とりどりの感性が文章全体に活きいきした脈動をもたらしている。印象に残るのは素直さとカルチャーに対する深い愛だ。また読みたい本が増えてしまった。来年出るというシリーズ三作目も楽しみ。

河合隼雄『こころの処方箋』読書感想文

河合隼雄先生は昔から敬愛している。この作品では多くの常識が書かれている。人の心の機微に通じた彼だからこそ書けるその常識の数々に、若者は関心を寄せ、年長者は納得するのだろう。河合隼雄先生の心の大きさがひしひしと感じられる良書である。

岩波文庫『老子』読書感想文

岩波文庫『老子』読了。道(タオ)という概念が繰り返し出てくるが、これは自然な流れのようなものなのだろうか。先に立つ者は自分を後にする、といった逆説は、しかしなるほどという実感を感じさせる。驕ってはいけないのは皆同じ。

始めに。

これはある会社員の読書記録である。彼女はレモンパイを食べたことがない。それゆえに、それへの愛は青空の映る朝焼け通りの水たまりよりも深い。アップルパイは既に知っており、それへの愛は虹の映る昼下りの路上の水たまりよりも濃い。つまり何が言いたい…