chacha子@読書

書評への愛、あるいは未知の知覚について

読書感想文 宮本輝『青が散る』

 なんというか、辛い読書体験だった。メンタルが高校生なので、大学生のキラキラした感じとか、闇とかが「あ〜、あの頃のみんなはこんなのを味わっていたのねなるほど〜」という感じがした。私は文章力はそれなりにあるかもしれないが、感情の面で箱入りなので、まだ味わったことがない苦労を疑似体験する格好となって満足だった。私の人生にも、これから叶わぬ恋とか、もどかしい感じとかを味わうことになるのだろうか。
 青春は自由で潔癖でなくてはならない、という趣旨の言葉が作中にあったが、これは胸に響いた。潔癖であるからこそ、自由の中でその潔癖さを表現することができる。燎平の人生の中に、辰巳先生がいてよかったなと思った。きっと、彼の人生の節目に、心の中に何度も登場して、彼を支えてくれるだろう。
 しかし、なぜこんなにも読後感が辛いのか。深堀りしていこうと思う。まず、安斎の死が堪えた。病気というものの怖さが迫ってきた。それに、夏子の浮気。自分の価値を下げる行為をしてしまったがゆえに、たぶん安斎の死にも繋がっているような気がする。好きな女の子が浮気してたら精神に触りますよそりゃ……。そして、祐子の秘められた想いと、燎平の行いな。自分が祐子を汚したという強烈な自覚が辛かった。あーあ……って感じで。全体的に、想いが実らなかったり潰えたりして、それが辛かったんよな。それが現実か。でも現実逃避のために小説を読んでいる身としては、けっこうそれが突きつけられる感じできつかった。人生は怖い、そのとおりだ。なんの拍子で思いもよらない方向に舵を切ってしまうか分からない。燎平も夏子も、したいと思って浮気をしたわけではなさそう。なんかそういう流れに乗ってしまったのだ。怖いね。こういうことあるから人生。浮気はしたことないけど、友達がしたことがあって、その時は許せなかったんだけど(私はその友達を神格化しているところがあった)、なんか逃れられない場の流れみたいなものがあったのかもしれないな……とぼんやり思った。いやでも浮気はダメでっせ。清く正しく生きるのが一番楽な道やと思います。難しいかもしれないけどね。
 とにかく、安斎には生きていてほしかったし、夏子には浮気しないでほしかったし、祐子はもっと早く燎平に想いを伝えてほしかった。それぞれの人生に光と闇があって、私はそれが辛かったんだ。私はどこかに光だけの素晴らしい人がいるはずだと思っていて、そういう人を探しているんだけど、そんな人はやっぱりいないのかな……と思った。それに、光だけだと優しさがないかも……いや、優しくて光だけの人求む。無謀かもしれないけど。いや、自分がそういう人になれたらいいのかな? などと思った。